ワクワク・ドキドキ感

以前、テレビで女優の薬師丸ひろ子さんが20年前に出演した映画で歌った主題歌を歌っている姿に出くわしたことがあった。その澄んだ声は、年を重ねた今も変わらぬ同じ声で、その美しさにドキドキしながら見入ったことがある。
私は20年以上組み込みマイコンソフト開発に携わり、数々の産業用ロボット、家電製品を世に送り出してきた。
そこには常にワクワク、ドキドキ感があった。

不易流行

伊勢神宮における20年ごとに、社殿、鳥居、橋、神宝、装束すべてを古来のものと同一に新しく作り変える「式年遷宮」というシステムが1300年以上つづけているという。
そこには、変えるべきものを変え、残すべきものはしっかりと残すしくみができあがっている。我々も技術の伝承のしくみでは同じで、マルチメディア媒体の変化、開発手法等は変化にフレキシブルに対応し、基本となる技術は、しっかりと伝えていかねばいけない。

「一発で動くものを創る」と「ケセラセラ」

昔、CDラジカセの製作のとき、現在のようにLSI側に役割を持つことは少なく、大概の事は、マイコン側で制御しなければならなかったころは、1つ間違えると、サーボモータ制御を誤り、CDの回転数があがり治具からCDが外へ飛び出したり、煙が出たりと、様々なトラブルに出くわした。

時には、 コンパイラーやデバッガー、果ては治具も無いので、すべて機械語で叩き込んで 「1発で動かしてください。」 という仕事も引き受けた。
火入れのときのワクワク感は、今も思い出す。時間が無いから、他に遅れをとってはと少しでも早く早く世に出すことを迫られる時代だからこそ、技術者にとって「一発で動かす」設計をめざすことは、大切なのである。
そこには、失敗が許されない世界があり、職人芸がそこでみがかれた。
まさに、1ステップ、1ステップがハラハラドキドキで、大きなトラブルでは、お客様からは、
「このワンステップのバグで、1軒家が建ってしまうのだよ」
と脅かされた。
ここで怯んではいけない。
「このバグで、我々は更なる進化をとげた」
と思う図太さも必要。

確かにグローバル化が進み量産品を扱うようになりまさに、1つのミスが、大きな損害を生む確立は年々高まってきている。それだからこそ、致命傷無く一発で動くものへの要求はたかまるが、2度と失敗を繰り返さぬよう心がけることも大切だが、ケセラセラも大切。

鉄腕アトムのように

鉄腕アトムの胸にマイコンを埋め込むのと同様に、オーディオ、カーオーディオ、通信機器、映像機器にチップを埋め込むと 魂を得たように動き出す。こんな感覚が大切。

すべての機能は、神が人を作ったとすれば、まさにその気持ちで、細部までプログラムがコントロールする。F1レーサが、マシンの隅々まで自身のからだのように感じてレースをするように、設計者は、それぞれのモデルの微に入り細に入り感じ取っていなければいけない。

時には、医者のように、いや医者以上に、そのターゲットのすべてを理解し、血液の流れ、神経系統に異常は無いか等々、すべてを感じ取らねばいけない。

長持ちするシステムを作れること。シンプル イズ ベスト

君の作ったシステムは、何年もちますか?
そのハードウェアが存続する限りと答えられるだろうか?
「ライフサイクルが短くなっているので、それほど気を使わなくてよい。」
などと言っている輩は、ろくな物を作らない。
1つ1つの商品は、進化し個性を持つ、1つとして同じものは無い。
5年、10年・・・と長持ちし、動き続ける設計をすること。長持ちできるシステムを作れる人でなければ、短期間での物づくりはできないし、短いライフサイクルのものは設計できない。
必要なところだけをシンプルに削りだせるノウハウをもちあわせているのも長持ちするシステムを作った経験のある技術者だけだ。

ランボーのように・パワフルに

我々は、いざとなればCPU、OSの中まで手をのばし、悪ければ改造し、移植もし、OSも無しで動くものを作り出す。我々が、数名で始めた頃の精神は、ゲリラ部隊だ。
私は、映画「ランボー」のように、よくナイフ1本、竹やり1本でも多くの敵陣を突破できる特殊部隊でなければいけないとメンバーには教えた。
少数精鋭とは、1人で何人分もの仕事をこなす集団である。現代は、集団で標準化のなかにあるが、より個性的にクリエイティブに生きることが肝要。

楽しむこと。好きであること

仕事は、楽しくなければいけない。
好きだからこそ、長続きもし、同じことの繰り返しもシタールの曲のように思えてくるもの。
現代文明に代表されるデジタル技術は、もしかすると人をだめにしてしまうかもしれないという疑いの目も持ち接する必要がある。
設計のしやすさ、わかりやすさ、速さ、便利さだけを求めて人の心を置き去りにしてしまうと大きなツケが後から回ってくることを覚えておかねばいけない。
人の心や五感に響く物づくりに携われる喜びを感じて、最近では、ミサイルや戦闘機、暗号化技術など軍事に使われた技術が下りてきて、さらなる合理化も進められ益々世知辛い世の中になってきていることもものともせず、純粋で正しい方向にむかう技術を持ち、年老いた竹細工の職人が、いくつもの作品を世に出してもいまだ満足のいくものがないと言う職人気質も持ち、そして、アナログのぬくもりや精緻さ、美しさを感じ取れ、人の存在を忘れない真の設計者でなければいけない。

古いやつだと御思いでしょうが・・・

最後に、前段までのたとえが全て古くて、ピンと来ない方も多くなっている今日この頃でありますが、この脈々と流れるスピリッツは変わらぬものであることを皆に伝えて行きたい。

技術統括 大渕 偉差勇

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